2018年3月17日土曜日

2018年3月10日(土)19:00 明治安田生命J1リーグ第3節 北海道コンサドーレ札幌vs清水エスパルス ~空白の5秒間~

0.プレビュー


スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MF駒井善成、深井一希、兵藤慎剛、菅大輝、三好康児、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF早坂良太、荒野拓馬、小野伸二、FW都倉賢、ヘイス。前節の前半限りで退いた宮澤は肉離れ(全治非公表)で、兵藤がスタメンに。荒野と濱がこの週から実践復帰しており、荒野が早速ベンチ入り。
 清水エスパルスのスターティングメンバーは4-4-2、GK六反勇治、DF立田悠悟、ファン ソッコ、フレイレ、松原后、MF金子翔太、河井陽介、竹内涼、ミッチェル デューク、FW北川航也、クリスラン。サブメンバーは GK西部洋平、DF二見宏志、角田誠、MF六平光成、楠神順平、高橋大悟、FW鄭大世。ヤン・ヨンソン新監督の下、鹿島、神戸に1勝1分けとまずまずのスタート。右足首痛で欠場の石毛に代わって、札幌戦でいつもスタメンな印象があるミッチェル デュークが起用されている。


1.序盤の攻防

1.1 予想以上に出てくる2トップ


 序盤は両チームとも蹴り合いが続いたが、10分頃からボールを保持する攻撃に取り組み始める札幌、奪ったら速い攻めを志向する清水と狙いが見えてくる。清水の守備に対する最初の印象は、予想以上にクリスランと北川が前に出てくることだった。特に、仙台では得点すること以外の部分で色々と課題があるとの評価だったクリスランが思った以上に精力的に動く。ただ北川とクリスランの持ち場はあくまで中央であって、サイドの福森や進藤に対しては基本的に守備対象と考えられていないようだった。
 進藤が持ち上がると対面のデュークが応対するが、デュークはハーフウェーライン付近から守備を開始する。(北川とクリスランの働きに左右されず)事実上ここが1stディフェンスの開始位置となる。言い換えれば、進藤はハーフウェーライン付近までは持ち上がることができる。
3バック+2MFでセット

1.2 張られた罠とリスクヘッジ


 13:13頃、進藤のフィードにチャナティップが抜け出す。これに近い形が3分ほど前にもあった(進藤がミスキックをしてジェイ様に怒られた)。進藤がハーフウェーラインを超えてもデュークは出てこない。そのため三好は清水のブロック内で包囲されていて、それは引いてくるジェイも同じ。ただこの試合、ジェイが引く動きが多かったが、入れ替わるようにシャドーのチャナティップが裏を狙う設計になっている。
 ミシャチームはこの縦のムーブからフリックを使って前進するパターンと、シンプルに裏を狙うパターンを持っているが、進藤からの展開は大半が後者だった。これは中央をグラウンダーのパスで狙うと、引っ掛かってのカウンターというリスクがあるのでまだ実戦では使えないという考えによると思われる。またこの時、チャナティップと共に反対サイドの菅もオープンになる。逆サイドからの展開だと、福森はここに1発でフィードを通せるが、それはロングキックだけならリーグでもトップレベルの福森だからこそで、札幌としてはこの構造は把握しているが、進藤には狙わせなかったのだと思われる。
進藤にはあえて長いボールを蹴らせる

1.3 求められる右利きシャドーの台頭


 そしてもう一つ、進藤の選択にロングボールが多い理由に、三好とジェイはいずれも左利きで右足があまり得意ではないことも挙げられる。ミシャチームの十八番とも言えるのが、数的優位の最終ラインが持ち上がり、サイドから中央に斜めの速いパスを入れて中央の選手がフリックし角度を変え、相手DFを突破するプレー。この時、フリックするFWやシャドーは相手を背負った状態でボールタッチするので、アウトサイドキックなどトリッキーなプレーを使わないのであれば、左足を使う選手は自身から見て右側(=ゴールに背中を向けているので、自チームの進行方向から見て左サイド)を向いた方がプレーしやすく、フリックの方向も基本的には左サイドにボールを落とすことになる。
ジェイがフリックする時の身体の向きとボールの方向

 よって進藤のサイドから斜めにボールを入れても、ジェイや三好は角度的に効き足でフリックすることが難しいため、やるなら左の福森から、となる。チャナティップは効き足である右足を使って進藤からのパスを処理できるが、おそらく進藤とチャナティップ両方のクオリティの問題があって、まだパターンとして確立されていない。
 ミシャがプレシーズンから、右に三好または都倉、左に宮吉、内村、ヘイスとシャドーには逆足の選手を置いているのはこのためで、特に宮吉は左のシャドーとしてプレシーズンで幾度も試されていたのはこうしたパターン構築のために、裏抜けもポストプレーもできる万能型の選手を確保したかったためだと思われる。

2.単なる3バック(改)

2.1 右サイドからのアシスト


 先制点を奪った15分以降、札幌が最終ラインでボールを保持する傾向はより強くなり、し、清水の1列目~2列目を引き出してからラインブレイクを試みるようになる。クリスランと北川による、札幌の最終ライン3枚に対する高い位置からの守備は継続されていた。枚数の上では、3on2で本来そこまで慌てる状況ではないが、福森はともかく進藤とキム ミンテが構成員に入っていることを考えると、3on2だから凄く安全というほどでもない。それなりの注意深さが求められる状況だったが、札幌はクリスランと北川が動き出すと、キム ミンテは進藤にボールを預け、札幌は進藤サイドから前進を図るようになる。
 そもそも何で(福森でなく)進藤から攻撃を始めるの?という疑問には、駒井と菅のキャラクターがヒントになる。藤田征也を想起するスタイルというか、基本的に縦への突撃しかない菅に対し、駒井は中央もこなすなどよりマルチな能力を備えている。駒井は前半、5トップ然として前線に張り付くだけでなく、マイボール時に低い位置…ちょうど、進藤に出てくるデュークの背後を取れるポジションで待っていることも少なくない。このポジショニングによって、進藤が駒井に渡すことは、2トップ+デュークの監視から逃れることにつながる。
駒井を使ってボール保持を安定させる

2.2 目的と手段の関係


 ただそもそも論として、ミシャチームはなぜボールを持ちたいのかというと、それはウイングバックがウイングに変わる時間を作るため。駒井がポジションを上げる時間を作るためにボールを持ちたいのに、そのためには駒井下がることが必要…という、目的と手段の関係がなんともいえない状況にもなっている。結局駒井がこの仕事を終えてポジションを上げるまで時間を作れたとしても、それは時間のかけすぎであって、撤退守備を用意しているチームであればその間に十分に迎え撃つ準備ができてしまう。
菅は受け手としてしか働かない

 一方で、逆サイドでは菅はこうしたアシストをせずに高い位置で張っているので、進藤は菅を狙うのであれば時間をかけずに行える。ただ先述のように、進藤→チャナティップのフィードは通るが、菅にはなかなか通らない。やはり対角に蹴る能力に関しては多くの日本人選手の例に漏れず進藤も課題を抱えている。
 また、清水の右SBは189cmの立田で、進藤からの高さのあるボールは頻繁に引っ掛かっていた。4か月前の日本平での対戦時と比較すると、立田、ファン ソッコ、フレイレを最終ラインに加えた清水は高さの点では確実にレベルアップしている。札幌は都倉がすっかりベンチ要員になってしまい、2本のタワーが1本だけになると相手に与える脅威は目に見えて低下している(11月の日本平には都倉はいなかったが)。清水が高さのある選手を揃えてきたのは色々な事情があると思うが、中央だけでなくサイドに立田、デュークといったサイズのある選手が配されている点も無視できないポイントだった。

 一方で、三好はこうしたシフト…駒井が前線に張り付かないことによって確実に恩恵を受けている。菅が高く張り出し、チャナティップが中央に固定されている左サイドに対し、三好は中央だけでなく駒井が空けたサイドのスペースも使える(もっとも、チャナティップはあまりサイドが好きではないらしいが)。そしてサイドの三好に対し、デュークが剥がされた状態での松原は駒井と両方を見なくてはならないため判断が難しくなる。
三好が流れると捕まりにくい

3.やり方を変えても塞がらない

3.1 変わらぬ関係


 26分の清水の同点ゴールは、札幌の「三大失点リスク」のうちの一つである、釣り出されたWBの背後を使われての失点だった(あとの二つは、前掛かりになった状態でのカウンターと最終ラインでの繋ぎのミス)。そしてやはり狙われたのは今回も菅のサイドであり、着実なスカウティングを感じさせるものでもあった。
 清水が松原から、竹内を経由して立田に渡る際の構図は以下になっている。竹内の周辺は、5-4-1で撤退するミシャチームは自由に使わせていて、数か月前、前線で兵藤と組み合わせることで改善が見られたジェイを中心とする前線守備は非常にルーズになっている。
 菅と立田のポジションにキャプションをつけたが、ミシャチームのサイドでの守備は、1stディフェンスを基本的に全てWBが行うようになっているので、立田に渡ると、守備担当である菅はこれだけの距離を詰める必要がある。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 ここでパススピードを上げて逆サイドに展開することの重要性を、竹内や清水の選手ははわかっており、竹内にプレッシャーを与えない札幌はわかってないと言われても仕方ない状況にある。低くて速いパスが出たので、菅は絶対に立田に寄せきれない。

3.2 四方田式ソリューションの成果


 立田から菅の裏へと走る金子に、スピードを落とさずに展開される。
 菅が出た時に明らかになったのは、前節までとは札幌は守り方を微妙に変えている。前節までは、菅が空けたスペースは福森がスライドしてカバーすることになっていて、サイドを破られたのは福森のスライドが遅い(間に合わない)という説明もできた。ただ今回は、福森は明らかにスライドを自重していて、菅の空けたスペースをカバーしようと代わりに出てきたのはチャナティップである。見たところ、チャナティップが固定的にその役割を担うというより、中盤センターの兵藤と共に分担して引き受けているように思える。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 チャナティップを走らせる理由は、福森をなるべく中央から動かしたくないため。開幕戦でティーラシン得点を許した局面がわかりやすいが、札幌の最終ラインのうち、キムミンテと進藤は非常に人にもボールにも釣られやすく、スペースを守ることが殆どできていない。福森がスライドすると、キム ミンテも簡単にゴール前からいなくなってしまうため、3バックを中央からなるべく動かさないことで安定を図ったことがみてとれる。これは四方田式というか、2016~17シーズンにとられていた手法でもある。
 この写真の後、中央を殆ど見ていない金子からクリスランへ浮き球のパスが通る。結構アバウトなボールだったが、それはプレーのスピードを維持することが重要で、(どうせ札幌は中は手薄なので)多少精度を欠いたボールでも通ると叩き込まれているかのようなパスだった。
 一方で、札幌は進藤とキム ミンテがそれぞれ、クリスランと北川を捕まえることには成功している。この点においては、四方田式のソリューションは一定の成果があったと言える。但し進藤vsクリスランのデュエルは進藤の完敗で、捕まえるだけでは守り切れないため、その意味では問題は解決されていない。

4.ミシャチームの5秒間

4.1 卵が先か、鶏が先か


 後半早々、ゲームが落ち着く前に清水が逆転ゴールを挙げ、まだブロックを崩す手段を構築できていない札幌にとっては非常に厳しい展開になってしまった。
 まずこの一連の流れで、キム ミンテの選択とプレーの質の悪さが目についた。スローインからのリスタートで、ミンテまでボールが戻された時の状況は下の写真で示されるが、ミンテには殆どプレッシャーがかかっておらず慌てる局面ではない。深井が下がって、やり直そうとしているが、ミンテはそれを無視してイージーに前線に放り込む。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 まずこのボールが精度を欠いていて、前線で唯一のターゲットとなりうるジェイに合わず、競り合ったのは三好。フレイレ相手ではまるで勝ち目がない。そしてその精度以前に問題なのが、清水がブロックを作って中央にも選手が揃っており、札幌が5トップで前線に張り付く形で放り込みを選択した判断。開幕戦の記事でも指摘したが、5トップで横に並んでいる状態だと、ターゲットとなる選手がマイナス方向に落としたボールをゲインすることは必然的に厳しくなる。前回11月の対戦で、清水の選手が「ジェイの競ったボールが自分たちのセンターバックとボランチの間に落ちるのが嫌だったと話していた」とする報道があり、この時は兵藤がジェイに当てたボールを拾う役割を遂行していたのだが、ミシャチームはそうしたコンセプトにないので、ここでの判断が確実に悪手になっている。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 昨年8月のセレッソ戦で、菊地がリカルド サントスに完敗したのが典型的な例だが、現代サッカーにおいて3バック(5バック)の中央に大型な選手を置きたい考えはわかる。ただ、これから札幌がゲームやトレーニングを通じてチームコンセプトを徹底させていこうとする中で、組織作り以前にキム ミンテや進藤ら(他にもいる)の個人戦術の向上が必要だとの印象を持っており、それを待つのは流石に悠長すぎないかと感じる。

4.2 空白の5秒間


 そしてフレイレが余裕ではね返し、デュークに渡るが、ここで兵藤だけがネガトラの対応ができる状態にあり、競っている三好は当然、また駒井やチャナティップ、ジェイもサボっているわけではないが5トップのポジションを取っている性質上、ネガトラ時に対応できる状況にない。これは開幕戦の記事で指摘した現象と非常に再現性があるので確認いただきたい。
 清水がデューク→松原→竹内とボールを逃がして竹内が前を向いた時、ちょうど三好が競り負けてから約5秒後、47:26の状況が以下。かつてグアルディオラは「5秒ルール」(6秒かもしれない)を掲げ、これはボールロスト直後の5秒間でプレスをかけ、カウンターをさせる前に完全にここで刈り取ってしまおうというもので、そのためにボールロストをリスクを勘定に入れたポジションを取り続けることを選手に要求することになる。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 ミシャチームの「5秒後」は、清水の選手(竹内)に前を向いて加速させ、またデュークがスペースに走りこむなど状況を確実に悪化させている。前提として、繰り返すがミンテの判断が引き金になっているのは無視できない。ただコーチングスタッフによる設計もまた、基本的に攻めることしか考えていない、より正確に言えば攻撃が一定の段階まで成功する(シュートまで持ち込める)ところまでしか考えられてないような設計になっていて、ネガトラは完全に中盤センターの深井と兵藤の個人任せ。
 この時は兵藤が個人の判断で遅らせようと前に出たが、深井はそれを見て残ることを選択しており、竹内の前方のスペースは放置されたままになっている。

5.勝つための準備

5.1 役割の見直し


 両チームの立場が逆転した後は、清水の準備の良さと作りかけのチームである札幌の脆さがが表れていく。
 清水は50分以降、前線の守備をクリスランと北川にほぼ任せ、後方の4-4ブロックの維持をまず優先する。この時、「2トップに任せ」というが、裏を返せば2枚でほぼ札幌に対抗できている状況でもあって、例えば下の52:59ではクリスランの脇のスペースを札幌は使えておらず、福森はわざわざ狭いところを通す縦パスを選択している(そしてDAZN中継の大森健作解説員が唸る)。本来ミシャが4-1-5の形を作りたがるのは、「4」の両端をこのスペースに配して使っていきたいからなのだが。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

5.2 サイド封鎖


 4-4ブロックの構築を優先する理由は、札幌の僅かな攻め筋であるサイドアタックを複数の選手で封殺するため。先の写真に続く局面で、左の菅に渡ると対面の立田は躊躇なく菅に出て正対し進路を塞ぐ。そして立田が空けたハーフスペースは河井がカバーし、チャナティップらの侵入の余地を排除する(昨年11月の対戦時、札幌の2点目はチャナティップのハーフスペース侵入からだった)。更に金子がプレスバックし、菅の内側の進路を塞ぎに行く。もっとも、菅は左足が9割なのでこれがなくても対処できたと思うが、金子が加勢することで立田は縦切りに専念できる。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 菅のところで詰まると、深井はサイドを変えて手薄(なはずの)逆サイドからの侵入を試みる。札幌の始点では、WBが張り出して横幅攻撃をぶつけると。4バックの清水はここで枚数が足りなくなるはずだが、清水はこの大外のケアにデュークを用意している。金子やデュークを前線守備に投入すると、札幌のサイドチェンジに対する大外のケアにも投入することはタスクオーバーに陥ってしまうので、それを避けるべく役割整理したことが効いている。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

6.師匠と弟子の共通点?

6.1 窮地の策


 後半20分を回って札幌はヘイスの交代を用意するが、ヘイスが深井と交代した直後に河井のスーパーなミドルシュートで1-3とされてしまう。札幌のスカッドで唯一、ジェイに匹敵する決定力を持つヘイスを入れれば1点差なら何とかなりそうとの目算だったのかもしれないし、具体的な形としては、クロスに対してターゲットをジェイだけでなくもう1枚用意したかったと考えられる。そしてそれは前半効いていた右サイドからの組み立て、左から右へのサイドチェンジが封じられたので、福森基点の左サイドアタックを基調に考えると、左からのクロスに合わせやすい右のシャドーにヘイスを置くという考え方もあったのかもしれない。
66分~

 ヘイスの投入に伴い、三好が中盤センターにシフトする。ミシャは試合後「三好のパス配球に期待した」とコメントしていたが、兵藤と三好のセットは、予想以上に兵藤がアグレッシブに前に出て、三好が後方で交通整理を担うという役割になっていた。前線の選手が1列下がる際、底でレジスタとなるか、この兵藤のように上がり目で攻撃にからもうとするか、という二元論どちらかというと、本来1.5列目の三好のキャラクターは兵藤と被っている印象があり、その兵藤が中央からいなくなると、三好が慣れない中盤底の位置・視点から一人で整理役を担わなくてはならないのは、ぶっつけ本番の形としては難易度が高かった。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

6.2 適材適所


 そして三好が下がった時のもう一つの問題が、前線で一番前を向けていた三好がいないため、札幌はバイタルエリアで前を向けなくなったこと。下の68:22は三好が中盤底で持った時、ヘイスは縦パスを感じて清水の4人の選手の間で待っている。しかし三好はおそらくこのヘイスが見えているにも関わらずパスを出さなかった(切り返しでクリスランをかわしてジェイに出す)。結果的にジェイからサイドに展開することで攻撃は繋がったが、このポジションで不慣れな三好は展開に時間がかかっていたし、またヘイスの受け手としての能力を把握できていないこと等もあってか、スムーズに攻撃が回らなくなっていく。
※キャプチャ画像で図解していましたが削除しました。

 組み合わせで言うと、出し手の深井・受け手の三好というユニットを解体したことは、そっくりそのまま攻め手を1つ失うことになっていて、三好をこの位置で残すよりは、そこに小野のようなより適した選手を置くべきだったと思う。

6.3 キャスティング主義の再来


 77分、札幌は荒野と都倉を兵藤、菅に変えて投入する。前線は都倉・ヘイス・ジェイとなりクロスが上がったときの期待値は高まるが、中央では都倉はシャドーというより2人目のFWのような動きを繰り返し、ボール大好きなチャナティップはミシャの指示を理解していないのか、ウイングとして張らず低い位置で受けたがる。福森はそれを見て左サイドで高い位置を取り組み立てに関与しなくなる…ということが同時多発的に発生し、これでは三好はボールを運ぶことが更に困難になってしまった。色々な事情もあってこうした選手交代を選択したのだと思うが、結果的にはどんどんバランスを崩すこととなり、昨シーズンまでのとりあえず選手を並べる「キャスティング主義」の再来のような光景となった。
77分~

7.雑感


 前半それなりにうまくいったのは、慎重な入りを予想していた清水が予想以上に前に出てきて、後方とサイドにスペースを与えてくれたことが大きかった。
 一方で昨年11月の対戦時と比較すると、まず清水は最低限必要な駒(中央に屈強なCB2枚)を用意していたし、横幅攻撃に対する準備もできていた。
 ポジティブに考えれば、ミシャは我々が考えている以上に札幌の選手の能力を買っているのかもしれない。そうした姿勢が後々実を結びそうな選手・ポジションと、恐らく早期により適した選手を用意した方がよいポジションが混在している。

8 件のコメント:

  1. 深井の偉大さを知った清水戦でした。
    ノノラジ情報では守備の個人能力を上げることを重視してトレーニングしているみたいです。
    ノノの言っている個人能力が対人守備スキルなのかチャレンジ&カバーみたいな守備の基本戦術なのかまでは分かりませんでしたが
    監督と四方田コーチの手腕の見せ所ですね。

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    1. 前者な感じがしますね。野々村社長や吉原宏太氏は個人能力とよく言う印象がありますが、例えば清水2点目の進藤の対応は確かに進藤が松原を止められるといいんですけど、そもそもそこで個で止められないと成り立たないサッカーなら進藤を使ってる限りすごく厳しいと思います。現状日本人で攻撃も守備もできる選手って本当に一握りなので。個の力と言い切ると簡単なんですけど、選手への責任転嫁でもあると思っています。

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  2. いつも更新お疲れ様です。

    個人的にポゼッションを志向する上でネガトラは非常に重要だと思っていて
    ペップのようにプレスをかけ、その間に守備組織を構築しパスコースを限定しボール奪取するのか
    又はクロップのようにボールホルダーに複数の選手が一気にプレスをかけ、ミスを誘発して奪取するのか
    ミシャがどのような対策をするのか注目していたのですが、現時点ではチームとしてそこが余りにも曖昧過ぎて少し残念でした。

    ブロックの外で回してポゼッション高めるのではなく、失ったボールを瞬時に奪い返し攻撃回数を増加させ高めることが重要で
    そこを徹底することが攻撃回数の増加だけでなくカウンターをされる回数の減少、延いては失点の減少に繋がるのではないかと。

    ただ、カウンター受けるのをゼロにするのはほぼ不可能なので、最終的にはDFの能力に頼る部分が大きく、補強がないとするなら彼らに成長してもらわないと、厳しい戦いは続くのかなと思っています。

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    1. 本来ミシャは失ったら5-4ブロックで撤退だと思うんですけど、そのリトリートからの守備も毎試合WBの裏を使われて簡単に攻略されていますね。これは確実にバランス調整が必要で、ただリトリートの色を強めると札幌の場合そこから前進が難しくなるのでは、という懸念もあります。
      一方でネガトラ時のプレッシングを仕込むのは、世界の潮流からいうと確実にそっちの方が重要なんですが、ミシャがミシャであるうちは戦術の特性上おそらく無理でしょうね。

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  3. この試合は生観戦しましたが、意図して角度をつけたフィードを入れていました。福森を中心としたDFラインからだけでなく、けっこうひっかかっていたものの深井もやっていましたし。清水はSBも高さのある松原と立田だったので全体として清水のDFラインは堅かったです。後半菅がトラップミスした時も立田が触っていたように見えましたし。

    ドームでは菅のポジショニングが明らかにおかしいと思っていましたがBS1での録画を見直すとシステム上の問題と言えそうですね。チャナティップが必死に戻っていましたが守備になっていなかったですし…。長いフィードで一気にWBに渡すのはいいとして、「失敗しない」前提で組み立てている面が少なからずあるので簡単に奪われてしまうと特に菅のサイドで人数が足りずにあっという間に大ピンチ。清水は明らかに狙っていましたね。

    WBに回った時のチャナがわかりやすいですがSBとSHで挟んで応対するWB封じは(既に示されていたのかも知れませんが)複数人で囲む4-4-2側の対抗策のバージョンアップと言えそうですね。一昨年のの四方田コンサがアウェイでやっていた人海戦術を洗練させたような気がします。後ろに人数割いても今のコンサのDFラインなら局所的に見ても進藤へ競り合いに強い選手をぶつけるとかで帳尻を合わせられる可能性が高い。J1はそういう選手はゴロゴロいますし。

    ヘイスと都倉がカブるというのもあまりいい感じはしませんでしたが、スタメンのボランチを両方とも代えるのはいくら何でもアドリブに走りすぎじゃないかと。深井をフルタイム使えない、加えて宮澤もいないってのはやはりかなりの痛手のような…。前回のコメントで荒野は勝手に持ち場を離れそうという危惧がありましたが、安心感というか中盤の底に「いてくれる」選手がいないのはとりわけミシャ式ではリスキーに思えてなりません。

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    1. パスサッカーという抽象的な表現がよく使われますが、攻撃においてはほぼ必ずロングフィードが重要になってきますね。フィードが蹴れるスペースを確保できるかという問題に加えて、札幌の場合、福森以外の選手のロングキックの問題も顕在化していると思います。

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  4. にゃんむるに教えてもらいこのブログを見るようになりました。最近のお気に入りです。
    昨年の組み立てと比べると、昨年は、左から福森が、右から菊地が展開していたと思います。菊地の故障がここにきて響いている気がしています。

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    1. コメントありがとうございます。2016シーズンは菊地の加入が最終ラインにイノベーションをもたらしていました。
      ただ見ていて感じたのは、四方田監督は菊地の個人能力をほぼそのまま使っているかのような状況で、チームとして練られていなかったためマンマーク気味に付かれると菊地も厳しくなってしまうことがありました。
      ミシャは四方田監督ほどゴール前を固めないので、少ない人数で空中戦もスピード勝負も対処したいのだと思われます。菊地を使うならそこがネックになりそうだと思っています。

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