2016年11月3日木曜日

2016年10月30日(日)15:00 明治安田生命J2リーグ第38節 ロアッソ熊本vs北海道コンサドーレ札幌 ~予想された脳筋3トップの機能不全~

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-1-2、GKク ソンユン、DF永坂勇人、増川隆洋、福森晃斗、MF前貴之、前寛之、宮澤裕樹、堀米悠斗、上原慎也、FW都倉賢、内村圭宏。サブメンバーはGK金山隼樹、MF菊地直哉、河合竜二、神田夢実、石井謙伍、ジュリーニョ、FW菅大輝。
 前節から復帰したばかりのマセードが、練習中に左ふくらはぎを痛めて離脱。早速、違いを見せつけていただけに痛い欠場である。代役は久々の出場となる前貴之。そして最終ラインは出ずっぱりだった菊地に代え、永坂が今シーズン初スタメン。前線はジュリーニョが今週から練習に合流しているが、まだ無理はできないということでベンチスタート。トップ下は神田でも中原でもなく上原。前節ヴェルディ戦で後半途中から使われたが、あまり機能しなかったように思える3トップを並べる形でスタートから試合に臨む。なお、前兄弟のボランチ、宮澤トップ下で上原が右サイドという予想布陣を書いていたメディアもあったが、これが採用されなかったのは、宮澤をボランチから動かしたくないという考えによるだろう。
 ロアッソ熊本のスターティングメンバーは4-3-3、GK佐藤昭大、DF黒木晃平、薗田淳、植田龍仁朗、片山奨典、MF村上巧、キム テヨン、上原拓郎、FW齋藤恵太、平繁龍一、清武功暉。サブメンバーはGK畑実、DF鈴木翔登、MF岡本賢明、上村周平、嶋田慎太郎、髙柳一誠、FW巻誠一郎。実際の運用は平繁1トップの4-1-4-1っぽい面もあるが、登録ポジション通りに表記すると4-3-3。この4-3-3ないし4-1-4-1の布陣は終盤戦で何度か使われていて、中盤から前は1トップが平繁だったり清武だったり、齋藤が中盤に入ったりと、アンカーのキムテヨン以外は色々な組み合わせが試されている。この日は中盤3枚がいずれもボランチタイプで、やや堅め、守備を重視しているのかなという印象である。


1.前半

1.1 奇襲大成功(熊本のカウンタープレス)

1)アグレッシブな熊本の入り


 2か月前の前回対戦時は清武、平繁を欠き、オーソドックスな4-4-2の布陣で試合に臨んだ熊本だったが、この日は局面によって4-3-3、4-1-4-1に形を変える、よりアグレッシブな戦術で札幌に対してキックオフ直後から奇襲をかける。

<熊本のカウンタープレス>


 熊本が狙っていたのは、攻撃時に3-4-1-2、守備時に5-2-3と変形する札幌が3バックになっているタイミング、つまり札幌が3-4-1-2で攻撃していて、守備陣形の5-2-3に変形する間の所謂ネガティブトランジションである。
 開始20分頃までの時間帯で、熊本はマイボールになると躊躇なく前線にロングボールを放り込むが、この際に熊本はセンターフォワードの平繁がボールを収めてくれるという期待はしていない。むしろ熊本の狙いは、札幌の陣形が整わないうちに放り込み、クリアが不十分になって、札幌陣内でのルーズボール争奪戦という局面を狙っているのが一つと、もう一つは札幌ボールになった際、ボールを保持することになる札幌の3バックに対し、3トップが数的同数でプレッシングを行い、高い位置でボールを奪ってショートカウンター、というのが狙いである。
ロングボールから札幌3バックに3トップでプレッシャー

 この時、熊本は3トップと2人のインサイドハーフが一気にポジションを上げ、上の図のように札幌の3バックとボランチに対してあたりに行く。図を見ると、ウイングバックの前貴之と堀米ががら空きじゃん、と思うかもしれないが、3-4-1-2の陣形となっている際にウイングバックは帰陣に時間がかかるので、素早く押し上げてプレッシングを行えば、そもそもウイングバックにボールが渡る局面は生じにくい。
 また札幌の3バックのうち、ボールを運ぶ役割は主に両サイドの選手だが、この日菊地がいないので、この試合は永坂と福森。熊本はこの点をしっかり研究していて、永坂と福森に対して明確な守備要因を用意してきた。

2)混乱する札幌ビルドアップ部隊と割を食った永坂


 札幌としては、熊本が試合開始直後からこれだけアグレッシブに来るなんて聞いてないよ、といったところだったか、見たところ全くの無警戒だったようで、開始5分頃からこの熊本の策にまんまとはまってしまう。
 特に割を食らったのは、3バックの中で一番経験の薄い永坂。たとえば5:30頃から、永坂の縦パスを都倉が収められず熊本ボールになり、そこから3分ほど、札幌の右サイドで永坂のファウル→FK、FK、CK×2と熊本のセットプレーが続く場面があった。
 ただこの時、永坂の縦パスが失敗した直前のプレーを見ると、堀米→福森→増川とボールが渡る場面で熊本の強烈なプレッシングを食らっていて、永坂に渡った状況では熊本の選手4人が永坂に襲い掛かり、また味方へのパスコースは切られている。
永坂に渡る前の時点で追い込まれている

 よってこれは永坂のミスだとか縦パスが下手という以前に、永坂に渡る前にボールを持っていた選手が熊本のプレッシングに泡食らい、苦し紛れに一番若い永坂にボールを逃がしたという貧乏くじを引かされたもので、こういう状況になる前にビルドアップを諦めてクリアする、といったソリューションを用意していなかったことが悲劇の原因である。
永坂に渡った時にはすでに囲まれている

3)痛すぎるトリプルパンチ


そして上記で言及した一連の、熊本の数回続いたセットプレーをなんとか凌いだ直後の9分、ク ソンユンのゴールキックを熊本が跳ね返し、札幌のDF-MF間に転がったボールに齋藤が全速力で突っ込む。福森がこれを見て斎藤の前に出ていくが、斎藤が一歩先にボールに触り、福森を置き去りにして突進していく。この時点で増川&永坂vs斎藤&平繁という2vs2。最後は平繁から出されたボールに反応した斎藤を永坂が倒し、池内明彦主審でなくとも誰でも笛を吹く明らかなファウルで熊本にPKが与えれる。PKを清武が決めて熊本が先制。
 この10分間の熊本の"ラッシュ"で、札幌は①先制点の献上、②永坂にイエローカード、③ビルドアップ部隊の混乱、というトリプルパンチを食らってしまう。特にPKが決まるまでの10分間、札幌はまともにボールを前に運べたというプレーが皆無だったことが選手たちに混乱や迷いを生じさせたのは、この後の試合展開を見る限り明らかであった。

1.2 ラッシュは続くも両ワイドは安全地帯


 開始10分を過ぎても熊本は"ラッシュ"の手を緩めない。さすがにこのペースで90分間プレーし続けるのは無理なので、いつかは嵐が過ぎ去るときが来るが、先制して試合が一区切りした後も続けてくるということで、札幌は何らかの対処をしなくてはならない。

 先述のように、この熊本のラッシュの肝は、札幌の3バック+2ボランチに5枚を当て、5vs5の数的同数を作ること。そしてこの「数的同数」の対象に含まれていない札幌の選手は、前3枚と両ワイドのウイングバック。前3枚には最終ラインが4枚とアンカーのキム テヨンが充てられているが、ウイングバックの前貴之と堀米のケアはあまり緻密に考えられていない。その都度近い選手、例えば右の前貴之に対しては、左サイドバックの片山だったり、左インサイドハーフの上原拓郎だったりがあたりに行くが、どうしても他のポジションに比べて空いてしまう。
 よってこの前貴之と堀米のところが、熊本がラッシュをかけていく時間帯において、札幌がボールを持てる数少ないポイントで、ここを起点に何とか攻めの形を作りたいところ。札幌のファーストシュート(スカパーでは何故かシュートに含められなかった)は14:15、前貴之が一瞬対応の遅れた片山を抜き去り、裏に抜けた内村にパスを通したプレーからであった。
CBには激しく当たってくるが両サイドは安全地帯

 また堀米や前貴之が最終ライン近くまで下がってボールを触ると、熊本はこの両選手をケアすべきか、放置すべきか迷う場面が何度か見られた。よって札幌としては、ウイングバックに預ければ何とか時間を作れ、開始当初よりは試合を落ち着かせられるようになる。

1.3 まさかの3トップ継続と予想通りの機能不全

1)狙いどころはFW脇の前進からアンカー脇


 15分頃になると、熊本が残りの体力を考えて"ラッシュ"を緩めたこと、また札幌がウイングバックにボールを逃がすことでやり過ごすことができると気付いたことで、一旦試合のペースは落ち着きかける。
 展開が落ち着いてくると、熊本は4-3-3から両ワイドが下がった4-1-4-1に変形し、札幌を迎え撃つ形で守りを構築する。札幌としてはこの熊本の変化は、3トップによる前からの圧力に苦しんでいただけに基本的には歓迎する現象である。
 一般に、4-1-4-1という守備陣形は4-4ブロックにアンカーを加えてバイタルをより強固に守るという考え方によるが、FWが1枚になったことで、FW脇を使われやすくなる。ここをケアするのは4人のMFの仕事だが、そのために前に出て対応しようとすると、今度はアンカー脇が空きやすくなる。
 そしてこの試合も、熊本が4-1-4-1で最前線は平繁一人になったことで、札幌は最終ラインやボランチが比較的、ボールを持ちやすくなり、FW脇を起点に攻撃の形を作ろうとする。

2)縦パスの受け手が誰もいない


 ただこの時、問題になってくるのが、最終ラインやボランチから攻撃のスイッチである縦パスを試みる時に、縦パスを受けられる選手がいない。より具体的に指摘すると、熊本の4-1-4-1の狙いどころであるアンカー脇でボールを受けようとする選手が誰もいない点。基本的に受け手となる選手は「前3人のうちの誰か」が担うことになるが、都倉、内村、そして上原の3名はいずれもFWタイプで、ボールに多く触って試合を作る、下がってボールを捌くといったMF的なプレーがあまり得意ではない。
 比較的、内村はたまにそうした役割を担うことがあり、もしかしたらこのメンバーの中で、四方田監督は内村にMF的な仕事を期待していたのかもしれない。それは前節ヴェルディ戦の後半で、この3人のセットを試したときに内村を下がり目に配したことからもうかがえる。
3トップが全員前張りで中盤(アンカー脇)に受け手を用意できない

 ただ試合を見る限り、この3選手の中でそうしたMF的なプレー、アンカー脇での間受けの重要性が意識されていたとは全く思えなかった。都倉、内村、上原ともにずっと前線で張っているだけで、ボールを受けに下がってこないので、長い距離の縦パスはことごとく熊本ディフェンスに引っかかってしまう。

3)なぜ慎也?


 特にトップ下・上原(トップ下だったのか、2シャドーの一角だったのかわからないが、これまでトップ下の選手に割り当てられてきたポストがこの試合では上原に充てられている)に関しては、なぜ神田etcを差し置いてこの役割で使われているのかが意味不明なレベルで、前線で彷徨っているだけ。トップ下がこれではボールを運び、攻撃に移れるわけがない。

 ないものねだりになってしまうが、ヘイスであれば下の図のようにDF-MF間、アンカー脇だけでなく、ボールが回らない時は更に下がって触ることで、攻撃を循環させる仕事をこなしていたはずで、ヘイス、小野を欠くここ2試合では、神田や中原といった選手を使って何とか解決しようとしてきた。結果、2試合勝ちがないが、アプローチ自体はそこまで間違っていない。
 ただ神田や中原でもなく、ヘイスの代役が筋肉自慢の上原となると、もはやアプローチが全く変わってしまう。上原ではこうした仕事は無理、というのは前節の時点でわかりきっていたにもかかわらず、スタメンで送り出した采配は非常に疑問が残る。
上原にはヘイスの代わりは無理

<慎也にフリーロールは無理>


 札幌のトップ下・上原という布陣の機能性の悪さを示していたのが以下の局面、23:11は宮澤が落ちて4バック化し、左のCBと化した増川が定石通り、1トップ脇からドリブルで持ち上がる。この時、4バック化してビルドアップの役割を増川と宮澤に任せているので、福森は一気にポジションを上げ、攻撃参加できる。そして福森が上がってくると、被らないように堀米が中央に侵入する。この動きは、福森の特徴も踏まえてチームとして仕込んでいたのかもしれないが、正直なところあまり綺麗に機能しているところを見ないので、おそらく即興的なものだと思う。
 そしてこの時、上原はトップ下の位置から、手前側、増川のボールを受けようとして、ボールによってくる動きをする。一方、堀米は増川が持ち上がり、パスが出そうなタイミングでマークを外し、破線矢印のように移動…キムテヨンの脇のポジションで"間受け"を狙う。
熊本が1トップ気味(前線の守備圧力が弱まる)なのを見て
増川はドリブルで運ぶ、福森はオーバーラップ、堀米は福森にサイドを明け渡して中央へ

 上原や堀米がこの動きをするとどうなるかというと、23:14、増川が縦パスを出せるポジションに移動したとき、堀米が最高のタイミングでアンカー脇に移動する。ここで正確なパスが出れば、バイタルエリアでターンして前を向くことができる。なお反対サイドでは内村も同じポジションを取っている。
 しかし上原は、一旦増川に寄った後、増川に背中を向けてUターンというよくわからない動きをする。しかもこの時、ポジションが堀米のいるレーンと完全に被ってしまって、増川が縦パスを出せなくなってしまう。
左サイドで福森が横幅を作り、アンカー脇を堀米が攻略しようとするが
上原の謎の動きが堀米へのコースを切ってしまう

 上原の試合後のコメントで「内村と都倉といい距離感を保ってプレーしたかった」という旨の発言をしているが、恐らく上原は根本的にどう動くべきか具体の指示をされておらず、また先制されてなかなか攻撃の形を作れない試合展開で、どう動くべきかわからなくなっていたと思われる。

4)脳筋3トップvs熊本の5バック化


 札幌のこの脳筋"3トップ"に対し、熊本はアンカーのキム テヨンが最終ラインまで下がって対応する局面が多くなる。というのは、キム テヨンは本来トップ下の選手…起用されていればヘイスや神田を見るような役割だが、この日はトップ下が上原で、また上原がしばしば最前線に張ってFWのごとくプレーするので、DF-MF間のスペースを管理するより、上原についていったほうが良い、となる。
 すると熊本のDF-MF間にはポッカリとスペースが空くので、札幌としてはここを巧く使いたいところだが、何度も言う通り、前線に並んでいる3人はいずれも前張り→裏抜け、しか考えていないので、下の写真のように、3人でひたすら裏抜けを繰り返すという単調な攻撃を繰り返し、熊本も難なく対応することができている。
3トップは全員前張りで誰もバイタルを使わない

1.4 押し込まれる両翼

1)ウイングバックが下がってしまう


 札幌のサイドアタックにおいて重要な役割を担うのは基本的に両ウイングバックで、右ならばマセードや石井、左ならば堀米、石井、ジュリーニョと候補者がいるが、いずれにせよ、これらの選手を高い位置に押し上げた上でボールを供給し、1vs1での突破やクロスなどを仕掛けられる局面を作りたいところ。
 ではウイングバックを押し上げるにはどうすればいいかというと、ウイングバックの後方にサポート役(ボール供給などの役割)の選手を置くことが必要になる。下の写真では、菊地が高い位置に侵入することで、石井へのボール供給を可能にするので、石井は高い位置を取る(サイドで、受ければ仕掛けられる位置でボールを待っている)ことが可能になる。
ウイングバックの押し上げ(10/2北九州戦より)

 この試合、札幌が有効なサイドアタックを繰り出すことができなかったのは、ウイングバックが高いポジションを取れなかったから。それはなぜかというと、菊地を欠き、永坂が起用された最終ラインがビルドアップに問題を抱えていて、そのサポートのためにウイングバックが下がってしまったから。
 特に、前半途中から永坂が関与するビルドアップが非常に少なくなる。おそらく増川としても、永坂を菊地のように使っていくのは危険だと判断して、福森サイドからの組み立てをメインにしたのだと思われる。
永坂は福森よりも低い位置にいて、ビルドアップへの関与を放棄している

 ただそうなると熊本も福森を使ってくることはわかりきっているので、福森への警戒を強める。すると福森のサポートに、堀米や宮澤のポジションがどんどん下がってくる。下の写真のような位置で堀米が受ける局面が多くなっているが、シュートまでもっていくには、そこから前線までボールを運ぶという作業が必要になる。
福森を助けるために堀米が下がってきてしまう

2)マセードが覆い隠していたもの


 この日故障で欠場したマセードは、上記の法則(ウイングバックを高い位置に押し上げないと攻撃できない)の例外で、というのは低い位置からでもドリブルでボールを運ぶことが得意で、またアーリークロスも備えているため、攻撃に関与できるレンジがほかの選手と比べて明らかに広い。
 要するに、マセードが右で出ている試合は、多少ビルドアップが適当でも、マセードに預けておけば勝手にボールを運んでクロス、という形を作れるので、それなりに攻撃が成立してしまう。

2.後半

2.1 やれることが少ない


観ていたほぼ全員が同じ感想だったと思うが、前半全くいいところがなかった札幌は、若干の修正を施して後半に臨んでいる。後半開始からの選手の入れ替えもあるかな、と思っていたが、あくまで"若干"という程度であった。
 立ち上がり、札幌は左サイドから何度かゴール前にボールを運ぶ形を作っているが、後半から左寄りに配した内村がこの多くのプレーに関与している。初め、内村をキムテヨンの脇に配しているのかと思ったが、実際はもっとタッチラインに近い位置まで流れてプレーしており、むしろ右サイドバックの黒木に対して、堀米と内村で2vs1の形を作ろうとしていた印象を受ける。福森から、堀米or内村に縦パスをつけて、空いた選手が裏に走るなどして何とか縦にサイドを突破し、攻撃の糸口をつかみたいという考え方だっただろうか。
 前線の選手で唯一、融通が利く選手が内村であり、また右か左かでいえば、永坂が脆さを露呈した以上、選択肢は当然左サイド。このメンバーだと、必然的にやれることが限られてくるのが苦しいところである。
内村が左サイド、タッチライン近くまで流れてプレー

2.2 遅攻から注文通りの追加点

1)熊本の遅攻のパターンと守備がハマらない札幌


 熊本はリードして折り返したことで、後半はよりペース配分を意識した戦い、ボールを持った際に素早く攻めるよりも、遅い攻めからじっくりとボールを使うやり方に切り替えていく。
 前半からそうだが、熊本の遅攻時に、札幌はリードされた時間帯が多いので、基本的には前からハメて行ってボールを奪いたいところだが、なかなか守備がハマらない。
 札幌の守備がハマらなかった理由は、熊本がうまく札幌の3トップによる守備を回避していたから。熊本は4-1-4-1で2CB+1アンカー、計3枚でビルドアップをするように見えるが、実際にはボールを縦に動かすときにはもう一人…主に上原拓郎が落ちてきて4枚でビルドアップを行う。上原が下の図のように左サイド、中途半端な位置にポジショニングすることで、札幌の3トップは「上原を見つつ、中央も空けないという」対応を確立できない。
前3人ではまらない

 札幌の3トップの守備を外した熊本は、清武にボールを入れる。清武が同じサイドで上がってきた片山を使うか、又は逆サイドから"わざと遅れて"、タイミングよく攻撃参加してくる黒木を使って、サイドからシュートまでもっていく。この時、札幌の3トップはプレスバックが遅く、外された後にそのままでいる状態が多くなっていて、熊本としてはサイドチェンジが容易にできる。

2)遅攻から注文通りに追加点


 65分、熊本は中央から左サイドに展開し、清武がコーナーフラッグ付近で前貴之と1vs1。清武が競り勝ち、片山に繋いだところで、片山の低くて速いクロスがニアサイドの平繁の頭へ。平繁が増川の前に飛び出して、逸らしたヘッドが決まって熊本が2点目を挙げる。

2.3 ギャンブルサッカーの時間


 2-0となった直後、札幌は2枚替えを準備する。なかなかプレーが切れず、交代が行われたのは70分で、永坂と前寛之がアウト、神田とジュリーニョが投入される。これにより、右から前貴之-増川-福森-堀米の4バック、3トップはそのままの残ってジュリーニョがトップ下、前線はどうやら、内村が右、都倉が左と、順足サイドに配置されている。
70分~

 札幌としては残り30分を切ってリードされているため、切り札のジュリーニョを投入するのは当然である。ただ、使い方としては、既に中央の選手として3人が起用されている中でトップ下にジュリーニョを置くという起用は、役割の整理や戦術的な狙いがどう、という話よりも、とにかく攻撃よりの選手を詰め込んでみた、という程度のもので、効果的なオフェンスなど望めるはずはない。ジュリーニョが低い位置で受けて単発で仕掛けるか、依然として前線に張り続ける上原と都倉目がけてロングボールを放り込むか、という、個人能力に頼った話で、たまたま、それらの選手の個人技が爆発すれば得点も期待できるが、そうでなければまるでダメ、「ギャンブルサッカー」そのものである。

 この後、77分に菅が投入されてギャンブルを継続するが、残り時間で当たりを引くことはできず、2-0で熊本が勝利。

ロアッソ熊本 2-0 北海道コンサドーレ札幌
11' 清武 功暉(PK)
65' 平繁 龍一

マッチデータ


3.雑感


 永坂と上原。これまでスタメンで起用される機会が少なかった両選手の起用はほとんど博打のようなもので、永坂については菊地のコンディション等の要因もあったと思うが、やはり本来のレギュラーと全く特徴の異なる上原の起用は完全に裏目だった。余談だが、北海道新聞の平川弘氏のコラムで「上原が前線では一番良かった」と書かれていたが、氏の評価基準はどういうものなのか、甚だ疑問を感じる。

3 件のコメント:

  1. 読みましたー(・∀・)ノ
    しばらくぶりにヒドイ試合でしたね。試合開始直後の奇襲についてはここ見るまで気付きませんでしたわ。
    ギャンブルに失敗してとんでもないことになってしまった泥沼状態の90分。この試合に関しては、俺の中では忘却の彼方に消し去る事に決定しております( ^ω^)←讃岐に勝った翌日なので少し落ち着いてる。
    平川さんの評価については俺も疑問だらけなので、基本流し読みですわ。
    次回も期待してますよー。

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  2. 永坂スタメンはまだ情状酌量の余地はありますが3トップで上原スタメンはどう考えても失敗でしょう。
    今までの起用法も大作戦要員かWB同士での交代起用だったわけで魔が差したとしか思えない。
    いずれにしても上原は単純労働で持ち味が出るのであって、地上戦でさえ使いどころが限られているのに
    トップ下のような頭脳労働系のタスクを任せること自体無理がある。
    上原は変化をつけられる選手ではないし、ボールをもらいに下がってもそのままついて来られるし、
    高さを失いたくないと上原を諦めることもできずに硬直した戦い方しかできなかった。
    必然の負けと言っていいでしょうね。

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    1. >フラッ太さん
      コメントありがとうございます。
      「魔が差した」、その通りだと思います。四方田監督としては讃岐戦みたいにがっつり押し込んで
      トップ下…上原が頭脳労働しなくてもいい、前のターゲットに専念出来る展開と読んだのかもしれません。
      いずれにせよトホホな采配でしたね…

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