2016年5月1日日曜日

2016年4月29日(金)14:00 明治安田生命J2リーグ第10節 北海道コンサドーレ札幌vs徳島ヴォルティス ~マセードの不満~

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスタメンは3-4-1-2、GKク・ソンユン、DF進藤、増川、福森、MFマセード、稲本、宮澤、堀米、ジュリーニョ、FW都倉、内村。
 徳島ヴォルティスのスタメンは3-1-4-2、GK相澤、DF橋内、福元、石井、MF藤原、広瀬、濱田、岩尾、内田、FW木村、山崎。木村が山崎の下、1.5列目の3-1-4-1-1のような形をとる。


1.前半の展開

◆前半のマッチアップ(札幌の攻撃時)


 3-1-4-2の陣形を採用する徳島は、札幌のポゼッション時、守備を5-3-2でセットする。
 札幌の攻撃の起点となる増川がボールを持ったとき、徳島が2トップvs札幌は3バックで、2トップでも上手く追い込めば3バックにプレッシャーをかけることは可能だが、札幌は進藤と福森が大きくサイドに開き、また徳島の2トップの中間にボランチ(主に稲本)がポジショニングする。
 この稲本のポジショニングにより、札幌のビルドアップは横幅と奥行を確保し、徳島の2トップだけでカバーすることを難しくする。徳島は進藤や福森に気を取られると、中央の稲本を空けてしまうことになる。
 最終ラインの進藤や増川がフリーの状態でボールを持つと、札幌の都倉や内村が裏を狙うのでラインを下げて対応しなくてはならないが、内村のスピードだけでなく、当たり負けしない都倉への対応も容易ではない。縦1本でシュートチャンスに直結するリスクに加え、陣形を下げられて後手に回ることになる。

稲本が2トップの中間にポジショニングし、横幅だけでなく奥行も確保できる
人数は4vs2、札幌の最終ラインが空きやすくなる

◆守備がはまらない徳島①:3+1vs2


 5-3-2の徳島の守備において、札幌との共通点はウイングバックにプレッシャーをかけてボールを奪う点。相違点は、徳島は中盤が3枚なので1枚がボールサイドにスライドしても残り2枚で中央を守れるが、FWは2枚なので広範な範囲をカバーするのが難しい。
 更に、上記のように札幌の最終ライン+ボランチの4枚で横幅、奥行を確保するので、2トップでこの4枚をカバーすることが難しくなる。
札幌のビルドアップに、高い位置から2枚で対抗する
増川に山崎がつき、木村はボランチを見ながら進藤にアタック
4枚に2枚で挑むも、簡単に無力化されボールを運ばれる
高い位置から行くのでFW~MFのライン間が空く

◆守備がはまらない徳島②:奪いどころはどこか?


 下の写真、15:40~の局面は、札幌がマセードに付けたところでマセードは進藤にバックパス。進藤は増川に戻すが、この時徳島の木村、山崎の2トップが進藤と増川を追いかける。この時、札幌のCBが深い位置にいるのでこれ以上木村と山崎が追いかけるのは難しいため、札幌のボランチへのパスコースを塞ぐポジションをとるが、徳島はインサイドの濱田も札幌のボランチについていく(15:47)。
マセードがプレッシャーを受け、進藤に戻す
進藤から増川へ
進藤、増川を2トップが追いかける
画面左端、濱田が宮澤へのパスを狙ったポジション取り

 すると 再び進藤からマセードにつけると、マセードには対面のWB内田が正面を塞ぎ、中で受けようとする宮澤に木村プレスバックするが、内田と共にマセードにつくべき濱田の寄せが甘く、マセードに内側へのコースを残している。
 中央を閉じてサイドに誘導し、サイドで複数選手が挟み込んで奪うならば、この時の濱田のポジショニングは中央に寄りすぎで、マセードに渡った時に素早くサポートできる位置にいなくてはならない。濱田のポジショニングは中途半端で、せっかく内田が対面のマセードに素早く寄せても宮澤へのパスで逃げられ、サイドを変えられてしまう。
再び進藤からマセードにつけると、木村はマセードを挟むためにプレスバックするが、圧力が足りない
マセードから中の宮澤に出されてサイドを変えられる
マセードから中のパスコースを消せない

◆守備がはまらない徳島③:やはり3+1vs2


 徳島は前半途中から、守備の開始ラインを下げ、2トップが自陣に撤退するようになる。ただ守備のスタート位置が変わっても、徳島は札幌の最終ライン+ボランチの計4~5人に対して、基本的にFWの2名のみで対応するので、なかなか守備がはまらない。
 例を挙げると下の、まず札幌の最終ラインで進藤がボールを持った時に、進藤を放置すると縦に運ばれるので、木村が進藤につく。この時木村が進藤につくと、宮澤が受けようとして進藤に寄るが、山崎はこの宮澤をケアしない。すると宮澤はノーマークなので簡単にターンする時間を得られ、中のパスコースを使って展開できる。
 加えて上記の場面(比較②)もそうだが、前半の徳島は木村のチェイスがインサイドハーフや山崎と連携できず、無駄走りに終わってしまう場面が散見された。特に木村が最終ラインの進藤や増川にチェックに行くも、山崎が中央のボランチ、稲本や宮澤を空けることが多かった。
稲本→進藤に出ると木村が進藤につく
宮澤が進藤に寄る
山崎が宮澤についていないため宮澤は楽々ターンできる
山崎が青破線の動きをしないと宮澤に中を使われ放題

◆前半のマッチアップ(徳島の攻撃・札幌の守備時)


 札幌はこれまでの試合同様に5-2-3で守備をセットする。開幕当初はセンターサークルの敵陣側頂点付近から比較的、高い位置でのプレッシングも見せていたが、ここ数試合は3トップが自陣に撤退して中央を固めるやり方がメインである。
 徳島は攻撃時、札幌の3トップへの守備に対応するため藤原が下がって4バックになる。札幌が中央を固めるため、基本的にはサイドを迂回してボールを運ぶ。橋内、石井ともに右利きなので、橋内のサイドからのビルドアップが多い。サイドのDFに展開すると、札幌はFWの内村や都倉が対応するが、両者がサイドを意識しすぎると今度は中央に2枚ポジショニングしているインサイドハーフ(濱田、岩尾)、トップ下気味に活動する木村に福元から直接当てる展開も用意している。
木村は半端なポジショニング

 岡山戦やセレッソ戦を見ていて感じる札幌の狙いは、撤退することで相手のCBにボールを運ばせ、裏にスペースができたところにスピードのある内村や菅を走らせることにある。特に内村を先発で起用したセレッソ戦は、内村を右サイドに配す時間帯が多かったが、これは対面の丸橋の裏を意識したものだったと考えられる。

◆木村の間受け


 徳島の3-1-4-2(3-5-2)は札幌が清水戦、京都戦で採用した陣形と似ている。守備時は5バック+3人の中盤で中央を固めることができ、攻撃時は後ろに3バック+中盤1枚を残せば、2トップに加えて中盤の2枚を攻撃参加要員として確保でき、攻守ともに中央に厚い布陣である。この布陣の優位性を活かし、徳島はウイングバックまでボールを運ぶと攻撃の人数を厚くする。
 前半3:10頃の局面では、札幌のGKから右サイドでボールを拾った徳島が素早く左に展開、内田がボールを持ちあがると2トップの木村、山崎に加えて濱田、岩尾が前線に駆け上がる。札幌の選手も帰陣しているが、マセード(宮澤が出たためボランチの位置)のポジショニングが甘く、パスコースが消せていない。徳島の木村がこのスペースを見逃さず、内田から斜めのパスを受けてターンしてミドルシュートを放つ。
 先述の通りマセードのポジショニングが甘くパスを通させてしまったが、徳島はこの時、稲本の視界外に岩尾もポジショニングしている。札幌は中盤が2~3人で守るため、バイタルに複数の選手が侵入すると捕まえきることは困難になる。
2トップ+中盤の2枚がゴール前にポジショニング
内田が中に切り込むと、マセードのポジショニングが修正されず、木村へのパスコースを作らせている
木村、岩尾を札幌の中盤は捕まえられていない

◆内田の仕掛け


 もう一つ、前半の徳島の攻撃で脅威となっていたのは左サイドの内田からの仕掛けで、徳島の最終ラインからのフィードなどで内田vsマセードの局面を作ると積極的にドリブルで仕掛けてくるほか、アーリークロスを上げてくる。特にドリブルでの仕掛けは、利き足サイドのドリブル(縦突破)だけでなく、札幌の中央の守備が手薄だとみると切り返しから中に切り込むパターンもあり、対面のマセードを後手に回らせていた。

◆FWの守備が生命線


 札幌の守備はこれまでの試合と同様で、端的には「中を締めて外に追い出し、相手の再度の選手が中に入れてきたところを奪う」やり方が主である。この時ポイントになっているのが、ボールサイドのFW(主に都倉、内村)の守備参加である。
 下の写真は、徳島は右CBの橋内が起点となってサイドを迂回してボールを運ぶ場面だが、徳島の中央のDF福元から橋内へのパスで札幌の3トップが形成するラインを突破されている。しかし内村が橋内についていくことで、橋内がパスを出すタイミングでは中のパスコースを切れており、橋内は斜め前方の木村へのパスコースしか残っていない。これならば札幌としてはパスの予測、インターセプトが容易で、また橋内のボールの精度も落ちる。結果、浮き球のパスを稲本がカットすることに成功している。
サイドのDFがドリブルで運ぶと内村がついていく
内村がついていくので、橋内が中に出す瞬間に横パスのコースを切れている
コースを限定させ、サイドを変えさせない

 ただ、札幌の5-2-3の守備も洗練されているとは言えない。例えば下の写真12:27~の局面は、内村がボールホルダーに一人で突っ込んだところをパスを通される。この時、一人で行って戻ってくるならまだ良いが、徳島が中盤でボールを保持しても内村はなかなか戻ってこない。
 そのため宮澤が一列前に出て対応しようとするが、宮澤も持ち場に木村がいるため中途半端な対応になってしまう。すると左CBの石井が空くのでWBのマセードが出るが、マセードが内田を離す…といった具合に一人ずつマークがずれる。このように内村の軽率な守備から後ろの選手の対応がずれ、フィニッシュまで持ち込まれている。
内村がボールホルダーに突っ込むが
この位置からのプレッシングはチームとして想定していないため
他の選手が連動しない
徳島が中盤で展開しても内村はまだ前に残っている
宮澤が一列前に出て対応しかけるが、木村が中盤に降りてくるのでそちらを見なくてはならない
結果左サイドに張っている石井が浮く
マセードが石井に出たところでマークが1枚ずつずれる
最後は増川が釣りだされ、木村が増川との1vs1からクロス
内村がいないので空いている石井をカバーしようとしたマセードから全てが1つずつずれる

 加えて、FWの選手3人で構成する守備ラインなので、一度このラインを突破されるとプレスバックでスペースを埋める意識があまり強くない。FW3人の守備が無力化されると、5-2の中盤に大きなスペースを残した守備ブロックとなる。逆に言えば、徳島としてはいかに札幌の「3」を突破するかがポイントである。(後述)

◆稲本・宮澤・ジュリーニョのライン


 徳島はジュリーニョに対してはアンカーの藤原が主に担当するが、ここでジュリーニョがトップの位置まで上がると藤原は受け渡さず、ジュリーニョについていく。すると徳島の中盤はど真ん中の藤原がいなくなるのでスペースが空くが、ここを札幌のボランチの1枚、宮澤が使うことができる。なお前線に都倉、ジュリーニョ、内村が結集すると渋滞してしまうので、内村は相手ウイングバックの裏のスペースに抜けることで渋滞を緩和し、最終ラインを揺さぶる。
稲本と宮澤の縦関係
2トップの間から稲本が出し、宮澤は徳島の中盤に進出

 8:19~の局面では、ジュリーニョに藤原が引っ張られ、徳島の3センター、岩尾-藤原-濱田のラインにギャップができたところで宮澤が稲本の縦パスを受けてターン。キープしつつ下がってきたジュリーニョに渡し、前を向いたジュリーニョが都倉に浮き球のパス。都倉の落としを再び宮澤が受けてラストパスを都倉へ出し、都倉が右足シュートを放つ。
ジュリーニョが藤原を釣り出したので宮澤が前を向ける
ジュリーニョの縦パスからの崩しでシュート

2.後半の展開

◆徳島の後半の修正


 徳島は後半開始から山崎に代えて渡を投入。同時に岩尾をシャドーに配し、3-4-2-1の陣形に変更する。
後半スタートの時のメンバー
濱田がボランチ、木村と岩尾がシャドーの3-4-2-1

 この布陣変更による影響は、ボランチ、特に濱田が前を向いてボールを受けやすくなったこと。後半立ち上がりは低い位置で濱田や藤原が触って、両サイドの広瀬や内田を走らせるといった展開が多くなる。この時、濱田らが自陣でボールを持っても札幌の3トップはプレッシングにいかないので、かなり自由に蹴ることができる。また木村も時折降りてきて受けるなど、後半立ち上がりは、後ろを安定させたいとの意図を感じた。
プレッシャーのかからないエリアからリスクをかけずにシンプルに蹴る

 ただ札幌としてはやることは一緒で、中央を固めてサイドに誘導し、サイドを経由して中にパスを入れたところを狙う。後半は徳島が前線の人数を1枚減らしたため、中で受ける選手が1人減り、パスが読みやすくなる。よって、後半立ち上がりは徳島が繋いでくるよりも、シンプルに蹴ってくる方がまだ可能性を感じる展開であった。
前3人は中を締めてサイドに誘導
中央で受ける選手が限定されており読みやすい
橋内→木村のパスを稲本がインターセプト

◆やはり守備がはまらない


 1点のビハインドを負う徳島は3-4-2-1にしたことで、前線の人数を増やし、3トップ気味で札幌の3バックへのプレッシングを強化してくるのかと思っていたが、実際はそうではなく、むしろ渡の1トップ気味で、シャドーの2選手が低い位置にいることが多かった。これでは、3バックでボールを回す札幌の最終ラインに対して十分なプレッシャーをかけられない。
増川にこの距離まで詰める。増川は進藤につなぐ
進藤への追い込みが不十分で、宮澤へのパスを簡単に通させる

 この後、64分に徳島は藤原に代えてキム・キョンジュンを投入する。キムは2トップの一角に入り、木村がトップ下、岩尾がボランチに下がった3-4-1-2となる。この時、守備陣形は5-2-3(札幌と同じ)であったが、77分に大崎を木村に代えて投入すると、大崎は中盤に入る5-3-2にとなった。この試合、徳島は前半からリードを許す展開だったが、最後までファーストディフェンスを改善できない印象を受けた。

◆「3」を突破する徳島


 先に述べたように、札幌の守備に対しては「3」を突破することが重要だが、徳島は後半途中からようやくそうした場面を作り始める。
 山形戦やセレッソ戦で札幌が「3」を突破されたのは、主に4バックのSBの選手が持った時の縦への動きだったが、この徳島戦の後半はCBからボランチへの縦パスが目立った。CBから中盤の濱田や岩尾、木村に縦パスが入り、札幌の守備が薄い中盤でターンして前を向けるようになると、札幌の守備陣の対応は後手に回る場面が多くなる。
 札幌が徳島のCBに縦パスを許すようになったのは、FW、主にジュリーニョの対応によるもので、後半はコースの切り方やボールへの寄せが明らかに甘い場面が目立った。
60分過ぎ頃から縦パスで「3」を突破される場面が増える①中央のFWとサイドのFWの間から
60分過ぎ頃から縦パスで「3」を突破される場面が増える
②中央を割られる
60分過ぎ頃から縦パスで「3」を突破される場面が増える
③中央のFWとサイドのFWの間から

◆マセードは代えられる出来だったか?


 札幌は57分にマセードに代えて荒野を投入する。マセードは全然まだ動けそうな時間帯での交代で、本人もそうした表情のように感じられた交代だった。
 恐らく前半から脅威となっていた徳島の内田を意識した交代だと思われるが、この試合で60分以降に何度かチャンスを作られたのは、サイドよりも上述の中央の守備(ジュリーニョらの対応が軽く、簡単に中央をパスで割られる)であった。札幌はサブに攻撃的な選手が荒野、小野、ヘイスと並んでいるが、後の2名は守備に不安があり、1点を守り切る交代としては使いにくい。よって前線の守備を強化するならば荒野を前3人と変えるしかなかったが、荒野はジュリーニョと交代。
 その後、69分に内村に代えて上原が入り、上原が右サイド、荒野がトップ下、ジュリーニョがFWとスライドするが、右サイドで安定していたマセードを最初に代え、ジュリーニョを最後まで残すベンチワークには疑問を感じた。

北海道コンサドーレ札幌 1-0 徳島ヴォルティス
・20分:内村 圭宏


【雑感】


 前半は徳島の前からの守備がはまらず、増川や稲本が安定してボールを動かし、宮澤が余裕をもって攻撃参加できる展開。率直に申して徳島はかなりルーズで、他のチームではこうはいかないと思われる。
 後半は、攻撃の最重要人物ジュリーニョを下げにくいのはわかるが、守備を改善するならマセードでなくジュリーニョを変えるべきだった。札幌の守備は、従前に比べるとかなり型は洗練されてきたが、やはりFW3人で構成する最前線の「3」のラインが盤石ではない。パスに自信のあるCBならば縦パスで簡単に「3」を突破できると思われる。
 また福森の交代(足を攣った)がなければ、最後の交代枠は稲本→櫛引で福森WB、堀米ボランチだったと思われる。稲本が最後まで出なくてはならない展開だったことも終盤ピンチを招いた要因の一つ。

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